お口を閉じた際、奥歯は咬み合っている状態で前歯に隙間が開いている噛み合わせを「開咬(かいこう)」または「オープンバイト」といいます。通常、正常な咬合では上下の歯が正確に咬み合い、咀嚼や発音に適切な力がかかります。しかし、開咬があると上下の歯が十分に接触せず、咬合のバランスが乱れてしまいます。
開咬の原因
開咬の原因として先天的な原因、後天的な原因が考えられます。
目次
先天的な原因(遺伝的要因)
骨格的な問題が原因で開咬になる場合があります。多くの場合、遺伝による影響が強く両親や祖父母が開咬の方は本人もなりやすい傾向にあります。
後天的な原因(環境的要因)
悪習慣
幼いころの指しゃぶり・舌で前歯を押す・下唇を噛むなどの悪習慣によって、歯が押され少しずつ歯列や咬み合わせが乱れていきます。これらの習慣によって、上下の顎骨の成長や咬合の形成に悪影響が及び、開咬が生じることがあります。
口呼吸
慢性的な鼻炎や蓄膿症などの呼吸系疾患を患うと、鼻呼吸がしづらくなり、口呼吸が習慣になってしまいます。慢性的な口呼吸によって、お口周りの筋肉のバランスが乱れることで開咬になりやすくなります。
開咬による弊害
咀嚼が困難になる
開咬によって上下の歯列が正常に咬み合わないため、咀嚼機能が十分に発揮されず、食物の咀嚼や嚥下が困難になることがあります。咀嚼が不十分な状態では、食物の消化や栄養の吸収に問題が生じる可能性があります。
顎関節症や奥歯への負担が大きくなる
開咬によって顎の咬合のバランスが崩れ、顎関節に過剰な負担がかかることがあります。これにより、顎関節症が引き起こされる可能性があります。顎関節症は、顎の痛み、関節のクリック音、開口困難などの症状を引き起こすことがあり、日常生活に不便や痛みをもたらすことがあります。また、前歯で食べ物を噛むことができないため、奥歯への負担が増えます。そのため、顎の骨や関節への負担が大きくなり、顎関節症や奥歯の破折・喪失リスクが高くなります。
胃腸への負担が大きくなる
前歯で食べ物を噛みきれなくなるため、しっかり食べ物をすりつぶせず飲み込むクセがつき、消化器官への負担が大きくなります。そのため、慢性的な腹痛や胃腸障害を引き起こす場合があります。
発音障害
下顎前突によって正常な咬合や舌の位置が妨げられると、発音に問題が生じる可能性があります。特に音の発声や発音の正確さに影響を及ぼすことがあります。下顎前突によって舌の適切な位置や動きが制限されると、言葉の発音に支障をきたすことがあり、発音障害を引き起こす可能性があります。
虫歯・歯周病になりやすくなる
お口が開いている時間が長くなるため、口腔内が乾燥しやすくなり、唾液の分泌量が減少するため虫歯や歯周病リスクが高くなります。
開咬の治療
矯正治療
開咬の基本的な治療法は、装置を使用した通常の矯正治療で、上顎前歯と下顎前歯が正常に咬み合うよう、上下顎の前歯を内側に引っ込めるか、奥歯の噛み合わせを低くする方法があります。矯正治療は、個人の状態や重症度に応じて適切な装置が選択され、咬合のバランスを改善し、開咬を矯正することを目指します。上下顎のズレを修正するために、歯を抜く可能性もあります。さらに、並行して筋機能療法(MFT)を行い、お口周りの筋肉を鍛えながら悪癖の改善を行います。
顎顔面外科手術
重度の開咬の場合、顎顔面外科手術が必要な場合があります。手術は、上下の顎骨の位置や形状を調整するために行われます。手術によって顎骨の再配置や骨切り手術が行われ、咬合のバランスを改善し、開咬を矯正します。手術後には、矯正治療を継続することで最終的な咬合の調整が行われます。
開咬の治療は難しい
開咬は悪癖が大きく影響する歯列のため、矯正治療で歯並びを綺麗に整えても、悪癖などの根本的な原因が改善されなければ、後戻りしてしまう可能性があります。そのため、歯を動かす通常の矯正治療と並行して、悪癖の改善もしなければなりません。しかしながら、幼少期からの癖は体に染み付いているため、治療期間も長引く傾向があり、治療が難しいとされています。